一般社団法人等を利用した相続税節税策に規制(平成30年度税制改正大綱より)


一般社団法人等を利用した相続税節税策に規制


一般社団法人等を利用した節税が広まったのですが、行き過ぎた節税との批判もあり、平成30年度税制改正で、この課税逃れを封じるための改正が行われることになりました。その内容をやさしく解説します。

 

※一般社団法人等とは、公益認定を受けていない一般社団法人と一般財団法人のことです。

 以下この記事では、利用が多い一般社団法人を念頭にしていますが、一般財団法人も取扱いは一緒です。

 

※この記事は、自由民主党が公表した平成30年度税制改正大綱をもとにしています。

 https://www.jimin.jp/news/policy/136400.html

そもそも一般社団法人を利用した節税とは?


世間的には、「社団法人」と言えば、営利目的である株式会社とは違い、公益的な印象を持っている方も多いのではないでしょうか。

しかし、実際には、平成20年に施行された公益法人改革3法により、昔とは大きく違ってきています。

現在は、社団法人は、一般社団法人と公益社団法人に分かれていて、公益社団法人は、内閣総理大臣や都道府県知事が公益性を審査・監督している正に公益法人であるのに対し、一般社団法人は、登記さえすれば基本的に誰でも作ることができ、一般社団法人で実質的な営利活動をしている社団も多くあります(配当することはできませんが、違法ではありません。)。

 

ただ、一般社団法人と株式会社との大きな違いは、株式会社が株主のものであるのに対し、社団はもともと人の集まりであるため、一般社団法人には持分という概念がありません。そのため、持ち主はいないことになります。

つまり、これを利用(悪用?)すると、財産を一般社団法人に移してしまえば、その後、どんなに利益が溜まろうとも、相続税がかからないという訳です。

そのため、単なる財産よりも、事業承継での節税に使われることが多いように思います。

 

一般社団法人は、公益社団法人と違い、役員である「理事」に制限はありません。

家族や一族で独占することもできますので、相続税はかからないのに、実質的に家族で支配することも可能です。

改正の内容は?


今回の平成30年度税制改正大綱で示された改正内容は、親族で支配している一般社団法人を個人とみなして相続税を課税する、というものです。

また、一般社団法人に贈与税が課される場合の要件を明確化することも盛り込まれました。

親族で支配している一般社団法人を個人とみなして相続税を課税する


親族で支配しているとは、どのような状態でしょう。社団法人には持分がなく、持ち主がいないため、実質的に役員(理事)が権力を持ちます。第三者が集まって理事になっている場合には問題は起こりにくいですが、親族で理事を独占したりしているときには、実質的にその親族がその社団法人を支配しているといってよいでしょう。

 

具体的には、

  • 相続開始の直前において、役員のうち同族役員が過半数
  • 相続開始前5年以内において、役員のうち同族役員が過半数であった期間が3年以上

のいずれかの場合に相続税を課すこととされました。

 

同族役員とは、亡くなった役員本人、その配偶者と3親等内の親族(おじ、おば、おい、めい等まで)などです。

これらの人たちで、役員(理事)の過半数を占めている場合には、役員又は5年以内に役員であった人が亡くなったとき、その社団法人に相続税が課されます。 

課される相続税額の計算方法


このときの相続税の計算方法は、

「その社団法人の純財産額 ÷ (同族役員(亡くなった人を含む)の数+1)」

で計算されます。

 

社団法人は、この金額の財産を、亡くなった人から、相続(遺贈)により取得したものとみなして、相続税を計算します。

まだまだ甘い?


この改正は、平成30年4月1日以後の一般社団法人の役員の死亡について適用されます。

ただ、これまでにすでに設立した一般社団法人については、3年遅れの平成33年4月1日以後の一般社団法人の役員の死亡について適用されます。

 

これまでに設立した一般社団法人についても適用があることは当然かと思います(3年遅れはなぜなのか?)。

ただ、計算方法が、その社団法人の財産を同族役員の数で割った金額ということは、同族役員を増やせば、その分相続税は減っていきます(増やした人が亡くなることもあるかもしれませんが。)。

また、対象となるのは、現職の役員か5年以内に役員であった人が亡くなったときなので、早めに退任して5年待つ、あるいは、初めから若い人しか役員にしない、などの場合には、相続税はかからないことになりますので、このスキーム、まだまだ行けちゃうのではないかと思ってしまいます。

また、焦点が「役員(理事)」となっており、理事を選出する「社員」には何らの制限・制約が設けられていないことからも、今回の改正は逃れる方法はいろいろ考えられます。

 

ただ、やってしまった後、さらに厳しく改正されても、もとに戻すのは大変なので、決してお勧めはしませんが。

一般社団法人に贈与税が課される場合の要件を明確化


これまでも、一般社団法人が全くのノーマークという訳ではなく、一般社団法人自体に贈与税を課税する規定はあります。

以下の要件に該当する社団法人については、例えば、1億円の価値のある不動産を、タダで一般社団法人に移したときには、一般社団法人自体が1億円分の贈与税を支払わなければなりませんでした。

  • 定款や規則で、役員等のうち親族等の割合を1/3以下とする定めがないこと
  • 役員等やその親族等に対し、特別な利益を与えること
  • その社団法人が解散した場合には、残余財産が国や地方公共団体、公益社団法人、公益財団法人などに帰属する定めがないこと
  • 法令に違反し、又は、帳簿書類に隠ぺい・仮装がある、その他公益に反する事実があること

これまで、贈与税が課されるのが、以上の要件の全部に該当したときなのか、一つでも該当したときなのかが、必ずしも明確でなかったため、一つでも該当したときに贈与税が課されるように明確化されることになりました。

 

ただし、この点については、これまでも、この規定を意識して、1億円の価値のある不動産は1億円で一般社団法人に移していることが多いと思われるため、それほど影響はないものと考えられます。