平成29年度税制改正で、経営不振の子会社の救済はやり易くなる!?


平成29年度税制改正で、経営不振の子会社の救済がやり易くなる!?


平成29年度税制改正では、組織再編税制の改正も多くありました。

注目されたのは、上場会社のスピンオフに関する税制ですが、今回注目するのは、次の改正です。

 

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 ⑨ 組織再編税制における適格要件について、次の見直しを行う。

  イ 企業グループ内の分割型分割に係る適格要件のうち関係継続要件につい

   て、支配法人と分割承継法人との間の関係(現行:支配法人と分割法人及

   び分割承継法人との間の関係)が継続することが見込まれていることとす

   る。

  (注)上記⑤から⑨までの改正は、平成 29 年 10 月1日以後に行われる組

     織再編成について適用する。

 

 (財務省 平成29年度税制改正の大綱より)

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これを図にすると、以下のようになります。

この改正により、(現)子会社は、分割後、グループ外に売却しようと、清算しようと、分割の適格判定上は問題がないことになります。

(現)子会社が100%子会社である場合には、(現)子会社を清算した場合、欠損金を親会社に引き継ぐことができます。

少なくとも、制度上は。

 

(注)支配関係成立時から5年経過していない場合などを除きます。

子会社を吸収合併した際の繰越欠損金の引継ぎが否認された!


新聞等の報道による情報のため、詳細が不明な部分がありますが、昨年、子会社を吸収合併したときの繰越欠損金の引継ぎが否認されたという報道がありました。

 

http://mainichi.jp/articles/20160830/k00/00e/020/205000c

(毎日新聞 平成28年8月30日)

 

この記事を図にすると、以下のようになります。

なにやら先ほどの図とよく似てますね~。

一定の要件を満たしているならば、吸収合併して、消滅会社の繰越欠損金を引き継ぐのは、制度上は問題ありません。

ただ、(現)子会社の事業は(新)子会社に移るけど、(現)子会社の欠損は、親会社に引き継がれて、親会社の利益が圧縮される結果となっているこの構図は、記事にあるとおり、『東京国税局は「企業再編の実態を伴っておらず、納税額を不当に圧縮させるのが目的だった」などと判断』することも致し方ないと思っていました。

 

(注)上記図の分割後に適格合併が予定されている場合の分割については、他の要件をみたせば、今回の改正前から適格分割とされていますので、今回の改正とは直接関係はありません。

ならば、今回の改正の趣旨は??


今回の改正の趣旨はどのようなものなのでしょう。

私が知る範囲では、この点について、これまでテクニカル的に弊害があったようなことは聞こえていません。

ならば、不採算事業の整理を後押しするような政策的な意味合いも含まれているのでしょうか?

だとすれば、毎日新聞の記事にあるようなケースであっても、欠損金の親会社への引継ぎが認められてもよいようにも思います。

 

今回の改正の趣旨は、各省庁から出されている資料からは見つけられませんでした。

夏くらいに、財務省から「税制改正の解説」、大蔵財務協会から「改正税法のすべて」という税制改正の担当官による解説が公表されます。こちらには比較的細かい改正についても趣旨が記載されていますので、こちらを確認するのを待ちたいと思います。

 

 

 

 

 

 

【7/6更新】

本日、財務省のホームページに、「平成29年度税制改正の解説」が掲載されました。

http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2017/explanation/index.html

 

早速、分割型分割の適格要件の改正について見たところ、この改正の趣旨は、

「移転資産に対する支配の継続という観点では分割型分割に係る分割法人との間の関係の継続を求める理由に乏しいことを踏まえた改正」

とだけ記載されています(334ページ)。。

よく分かりませんね。

 

これまで通り、経営不振の子会社の事業だけ別会社に移し、欠損金付きの抜け殻会社を親会社に合併することは、慎重に考えた方がよさそうです。