非上場株式の評価方法の改正案が公表されました


非上場株式の評価方法の改正案が公表されました


平成29年度税制改正大綱に、取引相場のない株式(非上場株式)の評価方法の変更についての記載があったのですが、3月1日、具体的な改正案が公表され、これについて意見公募手続き(パブリックコメント)が開始されました。

 

↓電子政府の総合窓口

「財産評価基本通達」の一部改正(案)に対する意見公募手続の実施について

 

そもそも、今回の改正のポイントは4つ

1.会社規模の基準の見直し

2.類似業種株価について、2年平均を選択可能に

3.比準要素(配当・利益・純資産)のウエイトを、1:3:1から1:1:1へ

4.比準させる上場会社の各要素の数値を、税務上の単体数値から、会計上の連結数値へ

 

そのうち、今回明らかになったのは、どれだけ類似業種比準価額を使用できるかを決める「1.会社規模の基準の見直し」です。

 

「会社規模の基準の見直し」の内容が明らかに


取引金額や総資産に関わらず、大会社に該当する従業員数の基準が、「100人以上」から「70人以上」に引き下げられます。

これにより、今より多くの企業が類似業種比準価額を使えるようになります。

 

また、従業員数が70人未満の会社についても、下の表のように、従業員数や取引金額の基準が引き下げられ、多くの企業が、類似業種比準価額が使用できる割合が大きくなります。


例えば、取引金額(売上高)が10億円の製造業の会社であれば、これまで0.75、つまり75%しか類似業種比準価額が使用できなかったのですが、改正案では、0.9、つまり90%使用できるようになります。

このほかの改正ポイント


このほかの改正ポイントについても、コメントしていきますが、このほかの改正ポイントは、いずれも類似業種比準価額の計算についてです。

2.類似業種株価について、2年平均を選択可能に

 

これまで相続や贈与等のあった年の前年1年間の平均は使用できたのですが、株式市場の値動きに大きく左右されるため、たまたま市場が好調で株価が上昇しているタイミングで相続が発生すると負担が重くなるという問題がありました。

より長い期間の平均も使用できるようにすることにより、市場株価の上昇局面における影響を緩和する効果が期待できます。

選択肢が増えたことにより、評価額はこれまでより下がる場合があることになります。

 

 

3.比準要素(配当・利益・純資産)のウエイトを、1:3:1から1:1:1へ

 

これまで比準させるときのウエイトは、利益が3倍でしたが、これを配当、純資産と均等にします。

これにより、足元の業績がよい成長・好業績の企業の負担を軽減することになります。

逆に、過去の蓄積は潤沢にあるものの足元の業績は芳しくない企業については、純資産が高いことが多く、負担が増加する可能性もあります。

利益の株価に対する影響が少なくなるため、決算対策で株価を引下げる効果を縮小するねらいもあるようです。

 

 

4.比準させる上場会社の各要素の数値を、税務上の単体数値から、会計上の連結数値へ

これまで比準させる上場会社の数値は、単体の税務上の数値を使用してきましたが、今後は、連結による会計上の数値を使用します。

(例えば、利益については、これまで上場している本体会社の税務上の所得金額がベースでしたが、今後は、海外子会社を含めた連結決算における当期純利益をベースになります。)

会計上と税務上の数値の比較については予測がつかないものの、通常は単体より連結の数値が大きいため、相対的に、非上場会社の数値は低くなるものと考えられます。

 

 

上記3については、評価額がこれまでより高くなる会社がでる可能性がものの、他の上記1、2、4の改正は、基本的に、評価額を引き下げる改正となるため、全体としては、これまでより評価額が少なくなると思われます。

 

経済産業省関東経済産業局主催の税制改正の説明会では、中小企業庁では、平均すると1割くらい評価額が下がることを想定しているそうです(中小企業庁担当官)。

 

 

これらの改正は、今年の1月1日以後の相続や贈与について適用されます。

 

 

 

 

 

【5/16更新】→非上場株式の評価方法が改正されました

 

【6/25更新】→平成29年分の株価表が公表されました!